オムニチャネルを実現する商業施設でのAI活用術(前編)

カテゴリ: 成功の秘訣やポイント


今回の記事から2回にわたって、2018年2月22日、株式会社ABEJAが虎ノ門ヒルズフォーラムで開催したカンファレンス「SIX2018」で討論されたAIカメラを活用した店舗運営の現状と展望について解説します。1回目の記事では、AIカメラサービスを活用したトレッサ横浜とPARCO_ya(パルコヤ)上野の試みを紹介します。

「ABEJA Insight for Retail」とは

 株式会社ABEJAは、リアル店舗にAIカメラを設置することで訪問客の行動をトレースできるサービス「ABEJA Insight for Retail」を提供しています。

 リアル店舗にカメラを設置することで、訪問客数を把握するサービスはありふれたものです。同サービスが革新的なのは、AIを活用することによってカメラ画像から訪問客の性別と年齢層を特定することにあります。こうしたことが可能なのは、同サービスにディープランニングによって顔認識ができるAIが実装されているからです。

また、「導線分析」と呼ばれる機能も実装しています。この機能は、AIカメラを活用して訪問客がリアル店舗のどのエリアで立ち止まり滞留したかを秒単位で把握することを可能とするものです。

 同サービスを導入すれば、例えばリアル店舗内における女子高生の行動を詳細に把握し、オムニチャネルを実現した施策を検討することが可能となります。

VMDの効果を実証したトレッサ横浜

 トヨタ自動車が運営する神奈川県横浜市にあるョッピングモール「トレッサ横浜」は、2017年10月、集客方法を改善するために「ABEJA Insight for Retail」を導入しました。

 トヨタの自動車を販売することを目的として商業施設として建設された同モールには、同社のディーラーショップが点在しています。こうしたディーラーショップにより多くの訪問客を呼び込むために、共用部に置かれたクルマ付近、同店舗に入ってすぐにところに置かれたクルマ付近、そして同店舗の奥に置かれたクルマ付近にカメラを設置して訪問客の行動を調べてみることにしました。

すると、訪問客が通り過ぎるのは共用部付近のクルマであることがわかった一方で、立ち止まってクルマを見る客は店舗の奥が最も多いということがわかりました。この結果から、店舗の奥まで入ってきてクルマを見ている訪問客はクルマに対する関心が高いので、そうした客を重点的に接客すべきという施策が導けました。

 また、クルマを陳列する位置はほぼ同じにして車種やデコレーションを変えて、立ち止まる訪問客数の変化を測定する、という調査も実施しました。その結果、キャンピングカーのような見栄えのするクルマはよく見られ、また風船などを使ってきれいにデコレーションしても注意をひけることがわかりました。

 以上の調査からわかるように、 ABEJA Insight for Retailは店舗の視覚的側面によって集客効果を高めるVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を検証するツールとして機能するのです。

収集データを接客に生かすPARCO_ya(パルコヤ)上野

 株式会社パルコも、2017年11月に東京・上野にオープンした商業施設「PARCO_ya(パルコヤ)上野」の全テナント店舗に「ABEJA Insight for Retail」を導入しました。

 同社は、同サービスで収集した訪問客数とその属性を全テナントに定期的に知らせています。収集したデータを共有する理由は、各店舗に勘や経験ではなくデータにもとづいた運営をしてほしいからです。店舗への訪問客数がわかれば、客が多いときはスタッフを増やし反対に少ないときはスタッフを減らすことで、効率的かつ高品質な接客を実現できます。

また、訪問客の属性がわかれば、特定の客層をターゲットとした品揃えや陳列が、実際にターゲットとした客層の注意をひくことができたか検証することができます。

 パルコは、以上のようにABEJA Insight for Retailを活用して顧客行動をつぶさにトレースすることで、集客率を高めることを目指していると言えます。

トレッサ横浜とPARCO_ya(パルコヤ)上野の事例で共通することは、AIカメラが明らかにする顧客行動を店舗運営の改善に活用しているところです。次回の記事では、AIカメラを活用した店舗の最先端事例としてAmazon Goを解説します。