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知っておきたい人工知能型「チャットボット」と人工無脳型の違いは?

カテゴリ: 課題や失敗例


チャットボットの知名度は近年急速に高まりましたが、そのチャットボットが2種類に分類されることに関しては、常識になっているとは言い難いのが現状です。そこで本記事では、こうした2種類のチャットボットについて改めて解説します。

ふたつに分けられるチャットボットの種類

チャットボットは、ユーザとの会話において実行される内部処理によって、2種類に分類されます。その2種類とは、人工知能型チャットボットと人工無能型チャットボットです。

学習によって成長する人工知能型チャットボット

人工知能型チャットボットとは、人工知能(AI)が会話を実行するチャットボットを意味します。この種類のチャットボットには、IBMが提供するWatson、Microsoftが開発するりんながあります。

ヒトではないAIがヒトと会話する時、AIは自然言語処理と呼ばれる処理を実行しています。カラダをもたないAIは、ヒトが入力した文章の内容を現実の世界と対応させて理解しているわけではありません。入力された文章に使われている単語とその単語が形成する構造を分析して、文章の記号的な意味を算出しているのです。
 
自然言語処理は、文章から単語を抽出する形態素解析と単語が形成する構文の解析を通じて、記号的に意味を解釈する言語学的アプローチの研究から発展しました。その後、文章の意味を統計的に推測する統計的アプローチが開発され、最近では機械学習によって意味を解析する手法も考え出されました。
 
人工知能型チャットボットの最大の特徴は、学習機能があることです。ユーザとの会話を重ねることで、この種類のチャットボットは会話により適切に対応できるようになるのです。こうした学習機能が実現した背景には、自然言語処理に機械学習的なアプローチが採用されたことが指摘できます。
 
しかし、人工知能型チャットボットの学習機能には注意を要する点があります。誤った学習を重ねると、不適切な会話を実行するチャットボットに成長してしまうのです。こうした誤った学習の事例として有名なのが、2016年にMicrosoftがリリースしたAIであるTayです。Tayは、一部の悪意のあるユーザによって不適切な発言をするように学習させられた結果、「ホロコーストはなかった」といった不適切な発言をするようになり、最終的には稼働中止に追い込まれました。
 
Tayのような事例は極端なものですが、人工知能型チャットボットの学習にはヒトによる監督が不可欠なのです。

シナリオが生命線の人工無能型チャットボット

人工無能型チャットボットとは、シナリオと呼ばれる会話の脚本の相当するものにしたがってユーザと会話するチャットボットです。人工無能型チャットボットは、現在多くのヘルプセンターやカスタマーサポートで稼働しています。このタイプのチャットボットは、人工無能型チャットボットのような学習機能はない反面、導入時に時間的・金銭的コストを抑制できるというメリットがあります。

人工無能型チャットボットの性能を大きく左右するのが、シナリオの品質です。人工無能型チャットボットはシナリオにない応答はできないので、答えるべき内容をシナリオ設計の段階で漏れなく落とし込む必要があります。また、ユーザが求めている回答にたどり着くまでのステップが冗長だと、ユーザに不快感を与えてしまいます。

高品質なシナリオを作成するには、一般には以下のような手順を実行します。

 

1.会話フローの設計

2.メッセージの洗い出し

3.文言の決定

 

最初に行うのは、会話フローの設計です。会話フローとは、ユーザがチャットボットを起動して求めている回答にたどり着くまでの会話の流れを図式化したものです。この段階で忘れてはならないのは、ユーザが予期せぬ入力を行った場合の言わば「例外処理」も想定しておくことです。

つぎに行うのは、会話フローを構成するメッセージの洗い出しです。例えばファッションサイトのチャットボットを開発する場合には、どんなカテゴリーの衣服があるか、さらにはサイズには何種類あるか、といったユーザに伝えるべき情報を整理するのです。

メッセージの洗い出しが完了したら、そのメッセージを伝える具体的な文言を決めていきます。文言を決定する時に重要なのが、想定しているユーザの属性です。ターゲット・ユーザは男性なのか女性なのか、あるいは若年層なのか熟年層なのかというユーザの属性に応じて、単語や言葉遣いを変えることによって、顧客満足度を向上させることができるのです。

 

以上のようなふたつのタイプのチャットボットに共通して言えるのは、どちらもまだ成長途上にある、ということです。それゆえ、以上に解説した機能や設計思想が今後変わる可能性が大いにあるのです。