AIマーケットの未来

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チャットボットやスマートスピーカーに代表されるヒトの言葉に反応するAI製品が、現在大きな注目を集めています。本記事では、こうしたAI製品に関する市場予測を概観して、成長過程における問題点も確認します。

大きな成長が見込まれるコグニティブAI市場

 2017年11月15日、調査会社IDCジャパンは「国内コグニティブ/AIシステム市場予測」を発表しました。同調査における「コグニティブ/AIシステム」とは、自然言語処理によってヒトの質問に応答するとともに、問題解決に機械学習を使用するデバイスまたはシステムとされています。この定義にあてはまるのは、チャットボット・サービスやスマートスピーカーです。

 同調査によると、2016年の日本における国内コグニティブ/AIシステム市場規模は158億8,400万円と推定されています。同市場は今後も年間平均成長率73.6%のペースで成長を続け、2021年には2016年に比べて約16倍の2,501億900万円規模になると予測されます。

こうした成長は、金融業などでの詐欺検出/分析、全業種での自動顧客サービスといった領域でコグニティブ/AIシステムの導入が進むことによって実現すると考えられています。

時代はSNSからチャットボットへ

 以上のIDCジャパンの調査は、エンタープライズ市場に焦点を合わせたものです。コグニティブ/AIシステム市場の成長は、コンシューマー市場でも見込まれています。というのも、一般ユーザにとって最も身近なデジタル製品であるスマホアプリにチャットボット導入の波が押し寄せることが予想できるからです。

 2017年5月12日、アプリ調査会社のApp Annieはアプリの使用状況を国別にまとめた調査結果を発表しました。その調査によると、使用しているアプリ数をカテゴリー別に集計した場合、もっとも多いカテゴリーはプリインストールアプリを含む「ユーティリティ」「ツール」であり、ついで「ソーシャルネットワーキング」「通信」「ソーシャル」でした。この調査結果から、ユーザが自分の意思でインストールするアプリではSNS系アプリがいちばん利用されていることがわかります。

 コグニティブ/AIシステム市場における代表的なサービスであるチャットボットはSNSアプリと親和性が高く、SNSアプリを継承すると考えられます。SNSアプリの機能の一部あるいは全てがチャットボットに置き換わった場合、チャットボットの市場規模は現在のSNSアプリ市場に近いものとなると予想されます。

過度な期待は禁物

 しかし、コグニティブ/AIシステム市場の成長過程では、試練が待ち構えています。その試練は、2017年8月23日調査会社大手のガートナーが発表した2017年度版ハイプ・サイクルで指摘されています。

 ハイプ・サイクルとは、新しいテクノロジーはいくつかの段階を経て社会に普及するというアイデアにもとづいて、テクノロジー・トレンドを分析する手法です。ハイプ・サイクルにおける段階とは、以下のようなものです。

・黎明期:新テクノロジーの可能性が検証される段階。検証段階のテクノロジーを実装した製品はまだ存在しない。
・「過度な期待」のピーク期:多数の成功事例が報告されるようになるが、失敗例もある段階。
・幻滅期:導入に失敗した企業が新テクノロジーに興味をなくす段階。新テクノロジーを活用できる企業が淘汰される。
・啓蒙活動期:新テクノロジー導入に関する事例が整理され、メリット・デメリットに関する理解がすすむ段階。
・生産の安定期:多くの企業が新テクノロジーを導入するようになる段階。

 2017年度版ハイプ・サイクルでは、コグニティブ/AIシステム市場を形成するテクノロジーである「コグニティブ・コンピューティング」「コグニティブ・エキスパート・アドバイザー」が調査対象となっており、これらは「過度な期待」のピーク期にあると分析されています。
 コグニティブなAIテクノロジーは現在大きな期待を寄せられると同時に、しばしば誤解に晒されてもいます。

例えばチャットボットはカスタマーサポート業務を代替し、人件費を大きく削減する効果が期待できます。しかし、全ての業務を代替することは現時点の技術レベルでは不可能です。コグニティブなAIテクノロジーはAIとヒトが適切に協働することによって、はじめて期待する効果を発揮するのです。

 ヒトに及ばない点はあるものも、日進月歩するコグニティブ/AIシステムには大きな可能性があります。このテクノロジーを導入する場合に重要なのは、絶えず更新される機能の限界を見極めながらヒトとAIの協働する体制を構築することではないでしょうか。