ZARAが取り組む新たなマーケティング戦略4つの「E」とは

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伝統的なマーケティング戦略のひとつとして、企業活動からマーケティングを考える「4P戦略」が知られています。しかし最近では、顧客の体験をマーケティングの中心にすえる「4E戦略」が台頭して来ています。本記事では、ファッションブランドのZARAが採用している4E戦略について解説します。

「4P」から「4E」に転換したZARA

スペイン発のファッションブランドであるZARAは、AR(拡張現実)技術を活用したアイテムのディスプレイを展開したことからもわかるように、先進的なマーケティング戦略を採用していることで知られています。

同社のマーケティング戦略が先進的な理由は、競合企業であるH&Mのような企業が伝統的な「4P」戦略を採用しているのに対し、「4E」戦略をとっているからと言われています。 

伝統的な4P戦略とは、「Product(商品)」「Price(価格)」「Promotion(プロモーション)」「Place(流通)」をマーケティングにおける基本要素ととらえるものです。
 
対して4E戦略とは、「Experience(体験)」「Exchange(交換)」「Evangelism(伝道)」「Every Place(あらゆる場所)」を新たなマーケティングにおける要素と考えるものです。
 
ZARAが4P戦略から4E戦略に転換した背景には、マーケティング戦略を構成する中心軸を企業から顧客に変えたことが指摘されています。

顧客中心の「4E」の内実

4E戦略が顧客を中心にして考えるマーケティング戦略であることは、4Eの個々の要素を4Pと対比すると分かります。

4Pにおける「Product」では、どのような価値をもった商品が顧客のニーズを満たすか、という観点が重視されます。対して、4Eにおける「Experience」では顧客が商品を購入することでどのような体験が得られるか、という観点に立ちます。
 
4Pにおける「Price」は、文字通り価格に関する戦略を意味します。価格設定によってターゲットとなる顧客層が変わるのは、周知の事実です。対して、4Eにおける「Exchange」は、顧客の商品を貨幣と交換する行為、つまり「買う体験」に焦点を合わせます。商品を買うという体験においては、価格設定のほかにも品揃えの豊富さといった観点も重要となります。
 
4Pでの「Promotion」は商品の販売促進活動を意味し、具体的には商品の宣伝戦略を立案することにあたります。対して、4Eにおける「Evangelism」は、インフルエンサーに代表されるような顧客の消費活動を巻き込んだ宣伝戦略となります。
 
4Pでの「Place」は商品の販路に関する戦略を指します。販路において重要となるリアル店舗の立地は、商品のイメージに大きな影響を与えます。対して、4Eにおける「Every Place」では、リアル店舗に加えてオンラインストアを含めて顧客がもっとも快適だと感じる商品との接点を考えていきます。ちなみに、ZARAの旗艦店はもっとも忠誠度の高い顧客にとって便利な場所に出店されています。
 
以上の対比により、4P戦略が「企業目線」で立案されるのに対し、4E戦略は一貫して「顧客目線」であることがわかるでしょう。

「4E」の要「インフルエンサー」の立ち位置

4E戦略の要である「顧客目線」をもっとも象徴している存在がインフルエンサーです。というのも、インフルエンサーは企業に忠実な「顧客」と企業と協働して商品を宣伝する「ビジネスパーソン」という二面性をもっているからです。こうした二面性をもつ顧客は、4P戦略では想定されていませんでした。
 
現在のビジネス環境では、どの業界においてもインフルエンサーの活躍がマーケティングに少なからず影響を与えます。とは言え、インフルエンサーとの協働においては注意するべき点もあります。

インフルエンサーとの協働においては、インフルエンサーの自主性やクリエイティビティを尊重することが成功へのカギとなります。企業がインフルエンサーに対して、写真の撮り方等に関してあまりに細かい注文を出すとインフルエンサーの個性を生かせなくなります。インフルエンサーは、商品のイメージに関するクリエイターでもあるのです。そうしたインフルエンサーの魅力を最大限に引き出すためには、創造性を発揮する余地を与えることが不可欠となります。

 

今日のビジネス環境は、以前にも増して流動性が高まっています。こうした環境においては、企業が立案したマーケティング戦略がすぐに時代遅れになることもあります。マーケティングが行き詰った時は、4E戦略に代表されるような「顧客目線」に立ち返えれば、苦境を打破するヒントが見つかるかも知れません。