絶対に知っておくべき「ECの顧客体験」②|ECエバンジェリスト・川添隆氏にインタビュー【オンライン接客編】
ECエバンジェリストの川添隆さんにインタビューさせていただき、全3回にわたって、「ECの顧客体験」についての概要から実践的な情報まで幅広くお伝えさせていただきます。
>>>第一弾はこちら! “絶対に知っておくべき「ECの顧客体験」①【CX基本編】”
今回の第二弾では、多くの担当者が注目している施策の一つである「オンライン接客」について、川添さんに詳しく教えていただきます。
ぜひ、今後のEC事業運営に役立てていただければ幸いです。
これまでは主にオフラインでしか実施できなかった「お客様へのインタラクティブでパーソナルな応対」を、オンラインで実現できる手段だと考えています。
まず、大前提として考えておくべきは、一般的なECサイトは、インタラクティブかつパーソナルな対応ではないということです。
カスタマーサポートで個別のお客様への応対はできますが、メールでのやり取りは即時性に欠けます。かつ、どちらかと言えば、「お問い合わせ」がメインです。
これまでオンラインの提案接客があるとすれば、
例えば、「こういうお客様が来るから、こういう情報や特集を載せましょう」とか、
「見せたいところが埋もれちゃうから、レコメンドで上げましょう」とか、
大抵はそういった「運営側が想定したお客様の期待に対する事前の対応」しかできません。
つまり、事前にしか対応ができないということです。
一方で、オフラインのリアルなお店の接客は、インタラクティブでパーソナルな接客をしているんです。
「この人にはこう言ったほうがいいな」ということを察して、個別のお客様のニーズに対して応対する、
すわなちパーソナライズしたお客様対応をしてくれるスタッフがいるから、店舗の接客は成り立っています。
それなら、「ECでも個々のご要望に対してインタラクティブに応対していこう!」という発想が、今のオンライン接客だと考えています。
より気軽に質問したい人には、チャット接客を用意したり、もっとじっくり話を聞いてほしい人には、ビデオ接客がいいかもしれないし、
お店に行っても「接客されるのは苦手」なタイプで、ビジュアルを見ながら「この丈感、どれくらいですか」って聞きたいと考える人には、ライブコマースやライブ配信のほうがいいかもしれません。
つまり、即時性のあるオンライン接客を言い換えると、
「店舗においてスタッフがカスタマイズしてやっていることを、ECサイトでも実装する」という取り組みではないでしょうか。
そうですね、接客とコンバージョン(購入)の時間軸で考えると、その心情や行動は理解できます。
オフラインの店舗での販売における一つの特徴は、「時間軸で接客とコンバージョンが一体になっている」ということです。
言い換えると、店舗スタッフの強みは接客とコンバージョンを一体としてご案内できることなんですよね。
もちろん、ウェブルーミングやショールーミング的な行動をとる人もいるというのは忘れてはなりませんが、一体型での購入の方が多いのではないかと捉えています。
一方で、オンライン接客では、基本的に接客とコンバージョンは一体ではなく、コンバージョン自体はお客様の意思で、時間のズレがあります。
つまり、コンバージョン(購入)はお客様の意思で決めることであり、お客様ご自身で行動していただくことですよね。
オンライン接客でできることは、購入まで持っていくことではなく、あくまでも接客なんです。
オンライン接客を受けて、お客様が聞きたいことは解決できたけど、オンラインで購入したいかというと、それはまた別軸での話でしょう。
特に実物を見てみたいって気持ちになれば、 おそらくお店に行かれるでしょう。
お客様ご自身がゴールを決めるにあたって、それに必要なパスをブランド側が出せたかどうかが重要なんじゃないかなと思います。
はい、そういったお客様へのアシストが結果として「信頼」につながっていくはずです。
とは言え、信頼ってそう簡単に生まれるものではないですよね。
モノに対する信頼もあれば、ヒトに対する信頼もある。
それらの蓄積やブランド(のれん)や企業の信頼につながっていきます。
特に、新規のお客様であれば、何かしらの信頼なくして、購入の意思決定をするのは、なかなか難しいですね。
それから、もう一点、EC担当者が考えておくべき重要なポイントがあります。
それは、オンライン接客を通じてお客様のジョブが一つ解決される可能性があるということです。
知りたいことは解決したものの、もしかしたら、もう一回じっくり商品を見たいのかもしれないし、家族や友人の意見を聞きたいかもしれません。
でも、オンライン接客を通じて一つでもお客様のジョブが完結されていれば、その後の購入への意思決定は、よりスムーズになりやすいと考えられます。
逆に、解決したいときに、そのジョブが解決されなかった場合を考えてみると、その次に不満が発生する場合もあるでしょうが、それよりも「忘れる」につながると思うんですよ。
そうです。よっぽど解決が必要な課題であれば別ですが、
「後でいいや」と思ったことは結果的に忘れる確率の方が多くありませんか?
たまたま見つけたんですけど、博報堂が2016年に『欲求流去』という概念でデータを出しています。
生活者からすると、欲しい物がないわけではないのは分かってるけど、お客様は忘れちゃうのではないかと。
欲しいと思ったその瞬間から、買う気持ちっていうのは、薄れていく人が多いというデータも出ています。
特に、検索、比較してるときが、買いたい欲求を失うということなのですが、このデータを見たときに、僕自身が生活者側としてもビジネス側の立場としても同意できる概念だと感じました。
だから、逆を言うと、やはりそこにしかない独自性があったり、比較検討されないブランド作ったら最強だよってことですよね。
気持ちが熱々になったら、極力冷めることなく次の行動に移せる可能性が高いということです。
「もう、ここにしかないです」「この感情を抱けるのはここにしかないです」っていうことですが、
今のD2Cの流れは、そういうブランドづくりに近いんじゃないかと思います。
例えば、コミュニティーのようなブランドのスタンスも含めて、そこにいるのが心地いいってなったら、そこから離れたくなくなりますよね。
僕は、「ない情報」を埋めてくれるものが、お客様の声だと思っています。
前提として、ECサイトは、運営側からすると次々に誘導をしていくお店なんですよね。
あくまでもサイト内でどのように行動するかの主導権はユーザー側にありますが、その行動できる範囲はお店側が規定していますし、
バナー、カテゴリーの並べ方、サイト内検索のロジックによってある程度誘導することが可能です。
ただし、 これには常に「その誘導はお客様が求めていることか?」という疑問が残ります。
仮にサイト内遷移のデータがとれても、意思のある行動がされなかったことはデータとしては残りません。
だけど、データに現れない要望はあるはずですよね。もちろん、これはオフラインのお店でも起こりえることですが、お客様の顔色や挙動である程度察することは不可能ではありません。
だから、ECサイトにおいてはデータでは測れない情報を埋めてくれるものが、お客さまの声だと思うんです。
そうですね、One to Oneのチャットでくださる声は非常に幅広く活用できると思います。
チャットボットであっても、要望の定量化は可能なはずです。
実はこういう声があるから、こういうコンテンツ作りましょうとかもそうですし、
問い合わせで「いつ届きますか」という声が多ければ、それを明示するかしないかを決める検討材料になると捉えています。
例えば、サイズや着用感に対する質問が一定程度あれば、「同じサイズの商品を異なる体型のモデルが着用したコンテンツ」を作成すれば解決につながるかもしれません。
チャットの声からもらえるヒントはたくさんあるはずです。
僕の場合はアンケートを活用してきましたが、これまで多くのヒントをもらうことができました。
もちろん、お問い合わせのデータも活かせるはずです。
また、それだけでなく、チャットをされるお客様は、おそらくチャットができなければECで買わないケースが多いと思うんですよ。
そもそも、「なるべくはやく事前に確認したい」というジョブが解決できないわけですし。
買ったとしても、多分、どっかに不安があったりする、
それを一回でもチャットを使ってもらえれば、そこに可能性が生まれるでしょう。
コンバージョンの確度に寄与できて、さらにお客様の声がもらえて、次のアクションに活かせるんだったら、これはメリットしかないですよね。
「絶対に知っておくべきECの顧客体験」の第二弾・オンライン接客編、いかがでしたでしょうか。
次回、11月下旬公開予定の第三弾は、川添さんに考える、EC担当者の思いについて、記事にさせていただきます。
ぜひ楽しみにお待ちください!
川添隆さん監修のマンガ「ECの顧客体験 -リピートサイクルはチャットでつくれ」も絶賛公開中です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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